■開催日:2025年7月24日(木)14:00-16:00
■会場:オンライン
■参加者:22名
■当日のスケジュール
14:00 研修趣旨
14:10 活動事例① ART(s)さいほく
14:35 活動事例② 東京アートサポートセンター
15:10 グループディスカッション
■概要
舞台芸術分野の普及に向けたさまざまな取り組みとして、2つの支援センターから事例を話していただきました。ART(s)さいほくのスタッフ、石平裕一さんからは、2024年度から始まった音楽分野の取り組みや支援センターの役割、東京アートサポートセンターRightsのスタッフ、村上あすかさんからは地域連携の視点も含めて活動について話されました。後半のディスカッションでは、舞台芸術分野へのアプローチとして、支援センターの活動の可能性について考えました。
■講師

石平裕一(ART(s)さいほく)
社会福祉法人昴で生活支援員として勤務。アート活動の拠点として開設した、まちこうばGROOVIN’のアトリエで創作活動支援や作品展やイベントの企画などを行う。 障害の有無に関わらず地域の方が気軽に楽しめる場づくりを目標にしている。

村上あすか(東京アートサポートセンターRights)
2020年、社会福祉法人愛成会に入職し、配属先の法人企画事業部にてアール・ブリュットをはじめとする芸術文化関連の公益事業を担当。2021年より東京都の障害者芸術文化活動支援センターの運営に携わる。2023年より東京アートサポートセンターRightsセンター長。
職員と利用者がバンドメンバーという間柄に
前半は石平さんからART(s)さいほくの音楽活動の紹介がありました。運営母体の施設にて、利用者とスタッフでロックバンド THE GROOVIN’Sを組み、週に1回の音楽活動を行っています。2024年には、特定非営利活動法人jogoが主催している音楽イベント「TOTAL MUSIC CONTACT PARTY 2024 Vol.4」(川越DEPARTURE)に出演しました。ライブハウスで演奏するのは初めての経験で、メンバーのみんなはスポットライトを浴びてパワフルに演奏しました。
舞台芸術分野には、障害のある人やその支援者、観客が一緒に同じ時間を共有して楽しめるという魅力があります。福祉施設では、音楽療法や楽器遊び、カラオケなど、従来から何らかのかたちで音楽に取り組んでいるところが多く、商工会まつりや夏祭りなど、地域での発表の機会もあります。そのなかで、「地域での音楽活動に事業所が対応していくにはどうすればよいか」という相談も増えてきました。
支援センターとして、まずは埼玉県内での音楽活動の状況を知るため、「埼玉県障害者アートネットワークTAMAP±〇(タマッププラマイゼロ) 研修会(番外編)面白いぞ音楽!楽しいぞ音楽!音楽表現の魅力を感じよう」を開催しました。県内で先駆的に取り組んでいるバンドに演奏をしてもらい、そのあと出演者らを交えて座談会を実施しました。座談会では、バンドを始めたきっかけについて、「初めは職員のみで結成したが、利用者さんも一緒にできたら楽しいのではと活動を始めた」などと話されました。また、バンド活動を続けるなかで「『利用者さんと職員』から『バンドメンバー』という間柄になった」「利用者さんが緊張や不安と戦う術を身につけることができた」などの変化についても共有されました。さらに「今後もライブを続けたい」「音楽活動を通じて地域の人や他事業所などと連携したい」といった話題も出ました。
舞台芸術の主体は福祉事業所や利用者本人です。本人のしたいことを一緒に考えながら、支援センターだけで実施するのではなく、関係機関や相談支援事業所などと連携していくことが必要です。そのうえで、ワークショップや発表の機会をつくること、情報提供をすることなどが支援センターの役割だと考えています。

2024年度に埼玉県で開催された音楽研修での一枚。職員と利用者でバンド活動を行っている県内4つの福祉施設によるライブ演奏を行った。開催後は、職員や利用者が活動の経緯や想いを語り合った
2つの取り組みから話す支援センターの役割
後半は、東京アートサポートセンターRights(以下、Rights)の村上さんからの報告です。Rightsに寄せられる相談には、障害当事者からの、作品発表の機会や一緒に活動する仲間がほしいという相談、福祉施設からの、利用者の芸術活動の充実、利用者の作品展示や発表の機会、グッズ展開についての相談が多くあります。また、文化施設や自治体、企業からは、障害のある人を対象にした芸術活動の取り組みの実施や、新たな事業展開などについて相談があります。美術だけでなく音楽、演劇など多岐にわたる分野の相談が増えている印象があります。
そうした相談を起点に実施した例として、「ティアラ表現ワークショップ『のはらフル』」(2023年度)があります。江東区の文化施設から障害のある人が安心して参加できる芸術活動の場をつくりたいと相談があり、同時期にNPO法人からも障害のある人の舞台芸術活動に関わる人材育成についての相談があったことがきっかけで始まりました。Rightsも芸術舞台分野の取り組みをどう広げていくか悩んでいた時期でもあり、3者の協働のかたちでスタートしました。最終的には「ファシリテータ育成研修」「障害のある人を対象にした身体表現ワークショップ」の2本立てのイベントを行いました。

東京都江東区の文化施設との連携により開催した、身体表現ワークショップ(2024年)。イベントの開催だけでなく、今後の活動持続を見据えたサポートをどのように行ったか、具体的に紹介された
撮影:たかはしじゅんいち
また、「のらくろーど『こーくりアートフェス』」(2024年度)は、のはらフル実施のための調査で福祉施設へ訪問した際、商店街など地域とつながる活動がしたいと考える福祉事業所に出会ったことがきっかけでした。Rightsでは、障害のある人と関わりのない人も、表現を発表したり交流したりする場をつくりたいと考えていたため、その福祉事業所に声をかけ、まちなかでの発表機会が実現しました。さらに、商店街組合の理事を務める江東区議会議員が共生社会づくりに力を入れていたため、運営進行への協力が得られました。アートフェスの当日は、高橋のらくろーど(高橋商店街)で、歌や音楽、ダンス、演劇など舞台芸術分野の発表のほか、作品展示やコミュニケーションをテーマにしたワークショップも行いました。
芸術文化活動は障害者の社会参加を促進すると考えています。創作過程で対話や接触などのコミュニケーションが生まれ、障害の有無にかかわらず多様な人が交流して、相互理解を深める機会になるからです。支援センターの役割は、芸術文化活動に必要なネットワークのハブとなること。各地域で、障害のある人に開かれた活動が地域主体で開催されるよう、ともに考え、共創、協働していく。そして、各地域で事業が自走できるようにサポートすることが求められていると考えています。
(構成:彌田円賀)


