南関東・甲信ブロック合同企画展2023 撮影:鈴木広一郎
神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター
アートセンター集 撮影:鈴木広一郎
東京アートサポートセンターRights(ライツ) 撮影:たかはしじゅんいち
YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター 写真:本杉郁雲
千葉アール・ブリュットセンター うみのもり
南関東・甲信ブロック合同企画展2023 撮影:鈴木広一郎
神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター
アートセンター集 撮影:鈴木広一郎
東京アートサポートセンターRights(ライツ) 撮影:たかはしじゅんいち
YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター 写真:本杉郁雲
千葉アール・ブリュットセンター うみのもり

その根底にあるのは、一人ひとりが主体的に生きていること、豊かに生きていること。楽しく暮らしていること。
障害のある人の芸術文化活動の支援とさらなる普及を目指し、
南関東・甲信ブロック内の支援センターと共働により広域での活動を展開します。
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OUTBACKアクターズスクール × 神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター

南関東・甲信ブロック合同企画展「カウンターポイント―それぞれの寄り添うかたち―」の関連企画として各センターの活動をご紹介します。


舞台芸術分野と中間支援組織の専門性を活かした連携
OUTBACKアクターズスクール × 神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター


福祉と芸術文化の関わりを考える場づくり

神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター(以下、支援センター)の運営団体である認定NPO法人STスポット横浜は小劇場「STスポット」の運営、学校や福祉施設への芸術家派遣、地域のアートプロジェクト支援などを行う。2015年度からは、文化庁委託事業や神奈川県との協働を通して、福祉と芸術文化の関わりについて考える場をつくり続けてきた。
2016~2018年度には横浜市神奈川区にある、精神障がいのある人が通所する「地域活動支援センターひふみ」にて、芸術家による造形や音楽などのワークショップを行った。芸術文化が福祉施設が地域とのかかわりを持ったり、同じ障がいのある仲間と楽しみを共有したりするきっかけとなっていた。


一人ひとりの体験をもとに 物語を紡ぐ 

そのとき「ひふみ」に勤務していた中村マミコさんが主宰するOUTBACKアクターズスク-ルは、神奈川県内を中心に精神医療に関する人権擁護活動や当事者の声を発信する活動などに取り組む、神奈川精神医療人権センターの関連事業として2021年にスタート。神奈川精神医療人権センターに関わる当事者を中心に構成され、精神障がいのある当事者の声を演劇などの芸術文化活動を通して社会に向けて発信している。


ワークショップを通じて対等な関係に

「ひふみ」に勤務するまで中村さんは、文化施設で演劇ワークショップの企画制作に携わっており、精神障がいのある方の福祉施設での勤務は初めてのため、支援者と支援員の関係性に悩み、「支援する/される」という関係性をどう受け入れて良いかわからなかったという。そこで、事業所に通う人たちと向き合う一つの方法として、これまでの経験をいかして一緒に演劇づくりを始めるようになる。利用者と演劇を一緒に作るうちに、支援者と支援員という関係ではなく対等に感じられて自身の仕事も受け入れることができた。

ワークショップの様子


サークル活動からアクターズスクールへ

当初は施設でのサークル活動に近かったが、この活動が中村さんの個人の活動として広がり、OUTBACKアクターズスクールの立ち上げに繋がる。昨年度から始まったアクターズスクールでは、約20名のメンバーがプロの俳優らとともに毎月ワークショップを重ねて一つの舞台を作り、昨年の公演は超満員だった。演劇はメンバーの体験をもとに構成している。心理療法を元にした手法で、人生を振り返りターニングポイントに石と花を置くワークショップなども行っているが、「治療」ではなくその人のことを知る機会とし、それぞれの経験を共有し、物語にいかすことを大切にしている。
ワークショップや公演を通じたメンバーの変化も多く、初めは声が小さくて聞こえないくらいの声量だったメンバーが堂々と舞台にたつようになったり、毎月のワークショップが仕事でも家庭でもない第三の居場所と感じるようになったメンバーもいる。


振付家&ダンサーの山田珠実さんによるワークショップ


「石と花」のワーク。今現在を色とりどりの花で表したゆゆさん。

2021年8月には設立記念シンポジウムの中で寸劇を披露するなど着実に活動を広げ、11月には公演を成功させた。2022年は、新たな参加者も加わり約20名のメンバーがワークショップを重ね、一人ひとりの体験をもとに物語の場面を構築しながら、11月の公演を作り上げた。この公演では、精神科病棟に入院しているメンバーが映像出演し、一緒に作った劇中歌を歌うシーンもあった。


寸劇の一部。大好評のドリフ外来 (撮影 佐藤光展)


活動の広まりに向けて

支援センターとしては、活動継続のための資金獲得や、広報について相談があった場合には、助成金情報を紹介したり、支援センターが持っている広報ツールに掲載するなど、協力をしている。また、OUTBACKアクターズスクールのように、当事者が主体的に関わり、自分たちの表現を発信する取組みはまだ多くないため、同じく精神障がいのある当事者や、その支援者などから芸術文化活動に関する相談があった場合には、先進事例として紹介し、活動の広まりにつなげていきたいと考えている。OUTBACKアクターズスクールの活動はまだ始まったばかり。公演をとおして得た手応えや、やってみたいことを胸に、旅は続きます。

OUTBACKアクターズスク-ル
ホームページ
https://outback-jp.com/

YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@outback6370/

第1回公演の様子をまとめた記録本(DVD付)を販売中!
https://square.link/u/PtHp92Kp