開催日:2023年6月6日(火) 会場:みぬま福祉会(埼玉) 参加者:19名
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当日のスケジュール
13:30 「川口太陽の家」見学
14:30 「工房集」見学
15:15 支援センターによる事業計画の共有
16:45 広域センターの事業計画の共有
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■会場
川口太陽の家/工房集(社会福祉法人みぬま福祉会)
「川口太陽の家」は1986年、埼玉県川口市に開所した障害福祉サービス事業所。1984年にスタートした無認可作業所を前身とする。重い障害があっても「働くことは権利」と位置付け一人ひとりに合った仕事を模索している。開所当初は缶プレスやウエスづくりが主流だったが、現在は絵画、織り、ステンドグラスなどの表現活動へと幅が広がっている。2002年には近隣に「工房集」を開所し、現在は合わせて60名ほどが通い、5つの班で活動する。
■概要
広域センターの実施母体である、社会福祉法人みぬま福祉会の施設「川口太陽の家」と「工房集」を見学しました。みぬま福祉会では20年以上前から障害のある人の表現活動を「仕事」と位置付けてきました。そんななか「活動を始めたい」「どのように表現が生まれているのかを知りたい」といった見学依頼の相談が多く寄せられるため、作家の創作風景や支援員との関わり、福祉実践などを見ることができる「アトリエ見学ツアー」を定期的に開催しています。
ツアーではみぬま福祉会の施設「川口太陽の家」と「工房集」にある5つの活動班をまわりながら、支援員や作家本人から直接話を聞くことで、障害のある人たちの表現活動にとって大切なことを考える機会となりました。参加者からは「余暇ではなく仕事として日常的に制作をし、作品が発信され社会とつながっている。一朝一夕には真似できないが、福祉のアート現場の目指す理想の光景を見せていただいた」といった感想も。2023年度最初の研修でもあり、ツアー後には定例会議も兼ねて各支援センターと広域センターの事業計画を発表し合いました。
■見学内容
「川口太陽の家」と「工房集」の5 つのグループ
アトリエ見学ツアーでまわるグループを紹介。サンだいち班、じゅうに班、きらっと班、あおぞら班の仲間※は「川口太陽の家」、めーべ班は「工房集」でそれぞれ活動しています。
※みぬま福祉会では施設利用者を「ともに働き・暮らし・地域をつくる仲間たち」という想いをこめて「仲間」と呼んでいる。
<サンだいち班> -ウエスづくりのほか表現活動も―
強度行動障害のある仲間が多く活動している。ウエス(工場などで油拭きなどに利用する布)づくりの仕事などを中心に行う。作品は日常生活の延長から生み出されたものが多く、それぞれに合った方法で自分を表現している。
<じゅうに班> -紙粘土の「ニギリ」など、一人ひとりに合った創作を―
知的障害だけでなく、身体障害があり車椅子で生活する仲間が多く活動している。絵画やガラス工芸などさまざまな創作に取り組む。なかでも特徴的な作品は、紙粘土を握った「ニギリ」。重症心身障害のある仲間が表現できることは何かと試行錯誤の末にたどりついた。
<きらっと班> -絵画や切り絵、立体など多様な表現に取り組むグループ―
絵画や切り絵、立体作品などに取り組む。さまざまな障害のある仲間が活動するため一人ひとりに合わせた作品づくりを考え、可能性を探り、さらに作品の活かし方を考えている。相手を思いやり、互いに協力する関係があり、仕事中は真剣でありながらどこか和やかな雰囲気がある。
<あおぞら班> -ガラスを操り、ステンドグラスを制作―
ステンドグラスを専門に扱う班で、小さなアクセサリーから巨大なランプやオブジェなど、創作の形はさまざまだ。色とりどりのガラスをつなぎ合わせ、「その瞬間」を表現している。ガラスを扱うときのまなざしは、まさに職人そのもの。作品は多くの人々を魅了している。
<めーべ班> -30年前、法人で最初に表現を仕事にした仲間たちとともに―
さまざまな障害のある仲間が活動している。アトリエ「工房集」で活動をしているこの班は、法人内でも表現活動を仕事にした先駆的グループ。30年前、どんな作業にも参加しようとしない一人の女性がいた。しかし彼女は絵を描くことだけは興味を示していたので、これを仕事にするしかないという考えが職員のなかに生まれた。この発想は施設全体の取り組みに広がり、さらに施設見学会などを通じて多くの来訪者に表現活動の実践を紹介している。仲間に寄り添うとはどういうことか、何のために行うのか。仲間それぞれが自分らしく活動を続け、豊かな暮らしができることを目指している。
撮影(見学内容):武藤奈緒美