南関東・甲信ブロック合同企画展2023 撮影:鈴木広一郎
神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター
アートセンター集 撮影:鈴木広一郎
東京アートサポートセンターRights(ライツ) 撮影:たかはしじゅんいち
YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター 写真:本杉郁雲
千葉アール・ブリュットセンター うみのもり
南関東・甲信ブロック合同企画展2023 撮影:鈴木広一郎
神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター
アートセンター集 撮影:鈴木広一郎
東京アートサポートセンターRights(ライツ) 撮影:たかはしじゅんいち
YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター 写真:本杉郁雲
千葉アール・ブリュットセンター うみのもり

その根底にあるのは、一人ひとりが主体的に生きていること、豊かに生きていること。楽しく暮らしていること。
障害のある人の芸術文化活動の支援とさらなる普及を目指し、
南関東・甲信ブロック内の支援センターと共働により広域での活動を展開します。
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埼玉県障害者アート企画展 × アートセンター集

南関東・甲信ブロック合同企画展「カウンターポイント―それぞれの寄り添うかたち―」の関連企画として各センターの活動をご紹介します。


ネットワークを活かした官民協働による展覧会開催
埼玉県障害者アート企画展 × アートセンター集


みんなでつくる展覧会

2009年、埼玉県による埼玉県障害者アートフェスティバルの一環として、「障害のある方の表現活動状況調査(以下、調査票)」が始まり、調査票をもとにした選考を経て「埼玉県障害者アート企画展(以下、展覧会)」が開催される。2016年より「アートセンター集」が運営する「埼玉県障害者アートネットワークTAMAP±〇(タマップ・プラマイゼロ)」が発足。展覧会の事務局を担い企画・運営を継続している。選考会では、行政、美術、福祉、それぞれの視点での対話を大切にし、交ざりあう価値観の中から選び抜かれた作品を展覧会で紹介。発表機会の創出に加えて、作家を取り巻く支援者の人材育成に主眼を置き、表現活動を通じて関わる福祉施設職員の支援力の向上を目指している。


選考会の様子


展覧会の様子(2022年)


埼玉県障害者アートネットワークTAMAP±〇(タマップ・プラマイゼロ)

行政、美術・教育の専門家、弁護士等と30団体に及ぶ福祉施設によるネットワーク。障害のある人たちの表現の魅力や支援のあり方を、毎月の会議や研修を通して学び合い、視座を高めている。また、対話を重ねながら多様な視点を取り入れ、みんなで展覧会をつくり上げるプロセスを“埼玉方式”として発信。ネットワーク参加団体である特色型支援センターの「ART(s)さいほく」とも連携を深めている。

研修会の様子


小林一緒さんとの出会い

小林さんは2005年、46歳の時に病気を患い歩行障害があるため、訪問診療、訪問看護、家事や身体介護のサポートを受けている。
2008年に訪問リハビリの理学療法士から「リハビリのため外出を促す支援はないか」と相談を受けた三郷市障がい福祉相談支援センターパティオの相談支援専門員である長島喜一さんが自宅を訪問した。ベッドの脇に腰の高さまでファイルや画用紙が積み重ねられていた。「これはなんですか?」といいながらファイルをめくると〝これはすごい! 旨そうだ〟と思ったそうだ。本人に尋ねると食べ物の絵を描いていると答え、丁寧に作品を説明してくれた。中には味の感想、レシートまで貼られているものもあり、ユニークだ。本人は、食べた弁当などを描いているだけだと。そして「これは、いずれはゴミですよ」と言っていたことが今でも脳裏に焼き付いているという。
「小林さん。ゴミだなんてとんでもない。すごい絵画で芸術だと思います。皆さんに見てもらいましょうよ」と提案した。これが世に出る出発点だという。長島さんは膨大な数の作品と忠実に再現されたお弁当やラーメンの絵に驚く。同時に絵を描くことが小林さんにとって生きがいになっていると感じ、定期的に訪問する際には最近描いた作品の話を聞くなど、作品を通じて関係を深めてきた。長島さんは外出のきっかけにもなればと思い、毎年、三郷市社会福祉協議会が主催している「ふれあい作品展」への出展を提案し出展を始めた。小林さんと見学のために一緒に足を運び、外出も叶う。また、この展示で行政職員の目に留まり、埼玉県が行っている「障害のある方の表現活動状況調査」を提出、2014年には「埼玉県障害者アート企画展」に出展の機会を得る。この展覧会でも来場者の注目を集め、訪れたギャラリストの仲介により、現在は国内外での展覧会に招聘されるようになった。現在も長島さんが定期的に自宅を訪問し、必要なサポートを受けられるようチームで支援しており、毎年の「ふれあい作品展」への出展も継続している。


小林一緒さんの作品


小林さん(左)と長島さん(右)
長島さんと小林さんを訪問した。長島さんが帰る間際に小林さんが「また来てね」と声を掛ける姿が印象的だった。


施設に所属していない人へのサポート
「アートセンター集」には施設に所属していない人からの表現活動に関する相談が増加傾向にある。また、展覧会の事務局を担っており、個人で活動する作家と関わる機会も多い。施設に所属していれば施設のバックアップが可能だが、所属していない場合は課題が多いため、より丁寧なサポートが必要だと考えている。小林さんの場合は、企画展の出展に向けて、長島さんと連絡を取り合い、作品展数や展示方法の調整を行った。また、小林さんの自宅に訪問して制作のきっかけや作品について話を伺うなど、作品の借用だけでなく本人との信頼関係を構築することも大切にしている。また、展覧会後も定期的に長島さんと連絡を取り合い、小林さんの体調、制作や展覧会などの活動状況を共有し、必要に応じて助言や広報協力を行っている。