南関東・甲信ブロック合同企画展2023 撮影:鈴木広一郎
神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター
アートセンター集 撮影:鈴木広一郎
東京アートサポートセンターRights(ライツ) 撮影:たかはしじゅんいち
YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター 写真:本杉郁雲
千葉アール・ブリュットセンター うみのもり
南関東・甲信ブロック合同企画展2023 撮影:鈴木広一郎
神奈川県障がい者芸術文化活動支援センター
アートセンター集 撮影:鈴木広一郎
東京アートサポートセンターRights(ライツ) 撮影:たかはしじゅんいち
YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター 写真:本杉郁雲
千葉アール・ブリュットセンター うみのもり

その根底にあるのは、一人ひとりが主体的に生きていること、豊かに生きていること。楽しく暮らしていること。
障害のある人の芸術文化活動の支援とさらなる普及を目指し、
南関東・甲信ブロック内の支援センターと共働により広域での活動を展開します。
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研修「支援センターの活動事例から鑑賞支援について考える」

■開催日:2024年7月8日(月)14:00 ~ 16:00
■会場:オンライン
■参加者:22名


2024年4月、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化され、鑑賞支援の取り組みが意識的に行われるようになっています。研修ではこれまでも鑑賞支援を取り上げてきましたが、今回は美術分野の取り組みについて、長野県のザワメキサポートセンターと、山梨県のYAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンターの事例を紹介してもらいました。事例紹介のあと、後半は2つのグループに分かれ、感想や質問、各々の取り組みなどを話し、最後に全体で共有しました。



上:「ザワメキアート展」にて制作背景までていねいにつづられたキャプション
下:YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンターによる中村キース・ヘリング美術館での美術鑑賞ワークショップ
All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation
Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection.


■講師

中村勘二、持田めぐみ、吉澤千恵子
(ザワメキサポートセンター〈長野県障がい者芸術文化活動支援センター〉)
なかむら・かんじ(左):1996年の福祉施設入職を機に、障害者の芸術活動支援の取り組みを始める。2011年には県
内関係者とNPO法人を立ち上げ、ネットワークの構築を推進。2016年より「ザワメキアート展」を企画運営。
もちだ・めぐみ(中):2017年からセンター前身のザワメキアート展実行委員会事務局へ、2022年ザワメキサポートセン
ター設置に伴いスタッフとなる。美術系短大出身のスキルを活かし業務を行う。
よしざわ・ちえこ(右):2016年の「ザワメキアート展」開始当初から関わり、現在は主に経理を担当しながらザワメキサ
ポートセンターのスタッフとして従事する。

 


瀧澤 聰、新田千枝
(YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター)
たきざわ・さとる(左):2014年に社会福祉法人八ヶ岳名水会入職。2016年にYAN 山梨アール・ブリュットネットワーク
センター事務局へ。2019年より同センター長。
にった・ちえ(右):2017年に社会福祉法人八ヶ岳名水会に入職、YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンターのス
タッフに採用。3年間は法人のアトリエ運営を兼務し、現在は同センターの専属となる。


展覧会の形式や場所を変えて展開
ザワメキサポートセンター(長野県障がい者芸術文化活動支援センター)

2016 年から実施している「ザワメキアート展」にまつわる鑑賞支援が紹介されました。「意識していたわけではないですが、結果的に合理的配慮や鑑賞支援にあたる取り組みをしていました」と中村勘二さん。本展は作家の所属する施設や自宅に訪問し、ていねいな取材をすることを特徴としており、キャプションには作品解説にとどまらず、作家の写真とともに作品が生まれた背景なども紹介しています。
またウェブ上での展示(WEB 展)、小学校や駅ビルなどに出張するキャラバンなど多様な形式で作品展を展開しています。WEB 展では360°カメラで会場を撮影し、オンラインで会場を見て回ることができます。キャラバンは出張先によって作品の選定や展示方法を工夫。例えば小学校の場合は小学生でも楽しめるモチーフの作品を選んだり、解説にルビをふったりしています。2024 年は「北アルプス国際芸術祭2024」と連携し「ザワメキアート展2024 ネイチャー イン アウト」を企画。会場はバリアフリーを重視し選定しました。また、信州アーツカウンシルと連携して、障害のある人と一緒にアクセシビリティに配慮した両展の鑑賞マップをつくることを計画しています。

ザワメキアート展のWEB展
▶WEB展はこちら


当事者との対話を通じて「楽しく」一緒に考える
YAN 山梨アール・ブリュットネットワークセンター

2022年、2023年に行った鑑賞支援の研修について紹介。研修を企画したきっかけには、全盲で車椅子の人が突然展示を見に来たことがあったそう。「楽しんでもらえたけれど、準備できていればお互いにもっと嬉しい気持ちになれたのでは」と感じ、「まずは楽しい時間を共有し、お互いを知ることから」と研修を企画したと新田千枝さん。2022 年には「忍野八海を観光する会」と「中村キース・ヘリング美術館を鑑賞する会」を実施。視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップを講師に迎えました。2023 年はPalabra 株式会社を講師に、UD キャストによる音声ガイドを付加した「バリアフリー上映会」を実施。映画『ケイコ 目を澄ませて』(2022 年)を鑑賞し、その後感想を述べ合う会を設けました。障害の程度や種類を限定せず参加を呼びかけた結果、車椅子のユーザーや知的障害のある人、その親族などさまざまな人が参加。事前の宿泊場所の提案なども行い「一歩踏み込んだ支援をしたことにより、その過程で得るものが多かったです」と瀧澤聰さんはいいます。両研修で聞かれたのは、「障害の有無にかかわらず感想を述べ合う機会は少ない。対話しながら何かを見るのは楽しい」という言葉でした。

バリアフリー上映会


■参加者の感想
・障害の程度によって出展者でも会場に行けない場合もありますが、ザワメキアート展のWEB 展はそういう人も会場の様子を知ることができると思いました。視覚障害のある人への鑑賞支援は県としても課題で、触って楽しむことなどを考えていましたが、YAN さんの事例で言葉で伝え合う取り組みは新たな発見になりました。(自治体)
・どちらの支援センターもマニュアルに沿った対応ではなく一人ひとりに合わせた関わりで、単に会場や環境を
整えればよいわけではないと改めて感じました。(支援センター)

(構成:坂本のどか)